これからの人事課に求められる“人的資本経営”の視点とは!?

「職員をコストでなく資本として捉える」発想が、自治体経営を変える
なぜ今、「人的資本経営」なのか
近年、民間企業では「人的資本経営」という言葉が急速に広まりつつあります。
これは、人材を「コスト」ではなく「価値を生み出す資本」として捉え、投資対象として育成・配置・評価していく考え方です。
背景には、少子高齢化による労働人口の減少、社会課題の複雑化、AIやDXの進展などがあります。
つまり、「人を増やせば回る時代」は終わり、限られたスタッフで成果を最大化する仕組みが求められているということです。この流れは当然、自治体にも波及します
職員一人ひとりの成長や専門性が行政サービスの質に直結する以上、人的資本経営の視点は“人事課だけの話”ではなく、自治体経営そのものに関わる課題です。
「人的資本経営」を自治体に置き換えると何が見えてくるか
自治体の場合、「人材=公務員」という特殊性があります。民間のように報酬や株式で動機づけるのは難しく、制度的制約も多い。
しかし、「職員を活かす」「能力を可視化する」「経験を循環させる」といった発想は、むしろ自治体のほうが急務です。
人的資本経営を自治体文脈に翻訳すると、以下の3つに整理できます。
① 人材情報の資産化
人材情報の資産化 職員のスキル、経験、研修履歴、評価結果などを一元化し、“人材データベース”として経営判断に活用する。
例:タレントマネジメントシステムの導入、キャリア情報の見える化。
② 投資としての人材育成
研修を「経費」ではなく「投資」として位置づけ、効果を可視化する。
例:研修後の行動変容や組織貢献度の測定。
③戦略的人材配置
「空きポストを埋める人事」から、「組織戦略に基づく人事」へ。
例:人材要件の定義、ミッション型・プロジェクト型人事。
人事課が”経営のパートナー”になるための視点転換
人的資本経営を進めるうえで鍵となるのは、人事課が“管理部門”から“戦略部門”へ変わることです。
従来の人事は「法令遵守・公平性の担保」が中心でした。
これからはそれに加えて、「組織の成長をどう設計するか」「職員が力を発揮できる仕組みをどうつくるか」という視点が求められます。
ポイントは次の3つ。
① データで語る人事へ
感覚や慣習ではなく、人事データ・アンケート・成果指標で施策を検証する。
例:研修効果・評価分布などを可視化。
② 組織と現場をつなぐ“翻訳者”になる
現場の声を経営に伝え、経営の方針を現場に落とし込む。 中間支援の役割を果たすことで、信頼される人事課になる。
③ 人事課自身が“学び続ける”
民間企業の人事や最新の人材マネジメント知識を吸収し、自治体流に再構築する。「人事課が一番変わる」ことが、全庁の変化の起点になる。
自治体の「人的資本経営」を進める3つの第一歩
すべてを一気に変える必要はありません。 まずは、以下の3つから着手するのが現実的です。
① 人材データの棚卸し
研修履歴、評価記録、スキルシートなど、バラバラに存在する情報を整理・統合。
→ Excelでも構いません。「見える化」が第一歩。
② 人材育成基本方針の再定義
「どんな人材を育て、どう活かすか」を明文化。
→ 研修体系・評価制度・採用方針と一貫させる。
③ 経営層との対話
人事課の取り組みを「経費」ではなく「投資」として説明する。
→ データと事例で語ることが説得力を生む。
人を””管理”する時代から、”価値化”する時代へ
人的資本経営は、単なる流行語ではありません。
それは、職員一人ひとりの価値を見極め、磨き、活かす仕組みづくりそのものです。
そして、その中心に立つのが、自治体の人事課です。
「人をコストではなく資本と捉える」
― この意識転換ができたとき、自治体経営の未来は大きく変わります。








